鉄は必須ミネラルの一つで全身へ酸素を運ぶヘモグロビンを構成する成分です。ヘモグロビンの量が不足すると身体の各部分へ酸素が行き渡らず酸欠状態となり、頭痛、立ちくらみ、だるさと言った症状いわゆる「貧血」を招きます。女性は月経や出産により多くの血液を失う為、男性に比べて鉄不足のリスクを高めてしまいます。更に鉄不足は貧血だけでなく、異食(氷、土を食べたくなる)や足がつる、爪が反り返る等の症状の他、女性においては不妊症の原因になる事も。現代人の鉄不足が増加している背景には、生活スタイルや食生活の変化が大きく影響していると言われています。
【鉄不足の要因】
①炭水化物や加工精製食品の増加
②ダイエット志向により、鉄を含む食品の摂取の減少
③野菜の栽培に有機肥料を使わなくなった事による野菜自体の栄養成分の低下
④胃酸の低下
⑤アルコールの常飲
現代人はストレスが多く、自律神経の乱れから胃酸の低下やアルコール量の増加、また偏食による食の偏りなど鉄分だけでなく、その他の身体に必要な栄養素の不足が指摘されています。更に困ったことに、鉄分は身体に吸収されにくく食事からの摂取がしにくい栄養素です。不足し易いけれど、しっかりと補完したい鉄分。サプリメントからの摂取も有効ですが、過剰摂取による害も鉄分不足以上に注意が必要です。
~鉄の種類~
鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄の2つのタイプが存在します。
ヘム鉄
ヘム鉄はレバーや赤身の肉、シジミやアサリ等の貝類を始めカツオなどの魚類と、動物性食品に多く含まれています。非ヘム鉄は腸管で吸収される際、食物繊維やタンニンなどにより吸収を阻害され易いのですが、ヘム鉄は鉄ポルフィリンに包まれている事から胃壁や腸管を荒らすことが無い上に、食物繊維による吸収阻害の影響も受けにくいため、非ヘム鉄よりも吸収率が高くなります。更にヘムオキシゲナーゼというヘム代謝に関わる酵素により吸収率が調整され、鉄の過剰摂取になりにくいのが特徴です。
非ヘム鉄
日本人は鉄分の多くを、この非ヘム鉄から摂取していると言われています。小松菜やパセリ、枝豆やソラマメなどの豆類、ネギやにんにくなどの香草類など、多くの植物性食品に多く含まれています。ヘム鉄に比べ吸収率が落ちてしまいますが、ビタミンⅭ(有機酸)と一緒に摂取する事で吸収率が高まります。
ヘム鉄、非ヘム鉄の両方をバランスよく摂取する事が大切と言えるでしょう。
~ 簡単に鉄を摂取するには ~
毎日の生活で、鉄分を意識して摂取するのは難しいのが現実です。しかし、鍋やフライパンを鉄製の物に変えるだけで、手軽に鉄を摂取する事が出来ます。昔の日本では鉄鍋が主流でしたが、今ではテフロン加工の物やアルミ鍋にその座を奪われてしまいました。その背景には、鉄製の調理具はお手入れが少し面倒という点が挙げられます。洗う際は洗剤を使わず、使用後は直ぐに水分を拭き取るか空焚きして油を馴染ませ、錆を予防します。毎回使用後にするお手入れと思うと少し面倒ですね。しかし、鉄鍋でも窒化加工を施した調理具は、普通の鉄鍋よりも錆び難く、扱いやすいのでお勧めです。また新しく鍋を買い替えるのはちょっと。と思われた方には、鉄玉子は如何でしょうか。鉄の塊で、ナスや黒豆の色だしに使用される他、アサリの砂抜きにも使用されます。煮物や汁物、お茶の時に沸かす鍋やヤカンに入れるだけで鉄が水に溶けだし、鉄鍋と同じような効果が期待出来ます。味付け前に取り出さないと玉子が錆びる原因となる為、取扱書を良く読み注意しましょう。1000円前後~と、安価で入手出来、何にでも利用出来る点が良いですね。
~ 鉄の過剰摂取 ~
しかし、鉄の摂取が過剰になると胃腸障害や色素沈着、更には肝炎や糖尿病を発症するリスクを高めてしまします。鉄の摂取は少な過ぎず、多過ぎず適量を摂取する事が大切です。
~1日に必要な鉄の摂取量~
成人男性 10mg
成人女性 12mg
妊娠後期・授乳期 20mg
女性は月経により鉄分の不足が大きくなる時期があります。体調に合わせて、摂取する鉄分の調整をされると良いでしょう。しかし、昔ながらの和食中心の食事を摂っていれば、自然と栄養バランスの取れた食事になります。まずは偏食にならない様に心掛け、お肉・魚・野菜・海藻類などバランスよく摂取しましょう。