栄養療法で診る不妊・不妊症
【 日本産婦人科学会では、不妊症の定義を 】
① 避妊せずに子作りをスタートしても妊娠しない
② その期間が1年以上
と、しています。従来は、2年間妊娠しない時に不妊症と定義していましたが、2015年よりその期間が1年と変更になりました。
近年では晩婚化や仕事等で出産年齢も高齢化しており、それを考慮した上での改定です。
不妊と一言で言っても卵子、精子、母体、生活習慣など、その原因も個体差があります。
ご自身にとって何が問題なのか、何に留意していけばよいのか、それを探っていく事が妊娠に繋げる一番の近道です。
・タイミングを実践しても妊娠に繋がらない
・高度生殖医療へのステップアップによる負担を少なくしたい
・高齢での妊活なので、体調をしっかり整えて治療に臨みたい
・子宮内膜や卵巣機能を上げ、質のよい生命力のある卵子にしていきたい
・不妊治療によるホルモン剤の副作用を最小限にしていきたい
・不妊治療でなく、自然に妊娠したい
など、その願いや治療状況も様々です。卵管閉塞や着床障害、無精子症や精索静脈瘤など、検査を受け、外科的な治療が必要な方もいらっしゃいますので、すでに1年以上妊活中の方は、まずは不妊治療の専門医に相談されるのがよいでしょう。
それと同時にご夫婦ともに体調を整えて臨む事が必要不可欠です。まずは妊娠しやすい体質に整え、そして出産まで胎児が元気に育つ体内環境を整えるための身体の土台を作っていく事が非常に大切です。
しかしながら多くの不妊治療の医療機関では、治療のプロセスが煩雑で、細かい栄養指導までなされていないのが現状です。
栄養療法に於いての不妊へのアプローチは、不妊治療専門医の直接的な治療とは異なりますが、体内の栄養やホルモンバランスを整える事により、質の良い卵子を育て、子宮内膜を安定させ、妊娠に備えた身体づくりを実践していきます。
妊娠を実現するためには、質の良い卵子と精子が出合い、生命エネルギー溢れる受精卵に繋げる事が絶対条件です。
卵子と精子が元気に育っていくために必要不可欠な栄養素が タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルの5大栄養素です。
これらの栄養素が各々に卵子や精子の材料になり、細胞が分割、成熟するためのエネルギーとなって働き、また、卵子や精子の生育の妨げになるものも排除してくれます。これらの栄養素の中でどれか1つでも過不足をおこすと、血流が悪くなったり、代謝障害などの不調をきたし、受精卵が成長する心地よい環境が損なわれてしまいます。最新の遺伝子研究では、妊娠前から妊娠初期の母体の栄養状態が産まれてくる赤ちゃんの将来的な健康にまで影響を及ぼす事も明らかになってきているのです。
細胞を元気にするために必要な栄養は?
細胞の主成分は、リン脂質、タンパク質、コレステロール、水分です。これは、母体のみでなく、卵子、精子の材料そのもので、、受精卵が分割、成熟するためのエネルギーにもなります。どれか1つでも栄養素が不足すると、代謝が阻害され受精卵が成熟するための条件や環境が損なわれ、結果的に生殖能力が低下してしまいます。
ですから、これらの栄養素をしっかりと摂る事で、妊娠、出産に向けての条件を整え、最良の環境作りをしていけるのです。
リン脂質
細胞や身体の基礎を整える上で重要な働きをしています。細胞膜を形成する成分の1つで、その約半分を担っており、水と油をなじませる性質があります。また、アセチルコリンという神経伝達物質の原料でもあり、精神を安定させたり、記憶力や集中力を高める働きもあります。また、体内で脂肪がエネルギー源として使われたり蓄えられたりする際に蛋白質と結びついて血液中をめぐります。
リン脂質の中でも、よく知られているのがレシチンです。不足すると、本来の細胞膜の働きである栄養素の取り込みや代謝がスムースに行われなくなったり、血管内にコレステロールがたまって動脈硬化や糖尿病へのリスクに繋がってしまいます。
レシチンは大豆や卵黄に豊富に含まれます。
タンパク質
筋肉、皮膚、ホルモン、免疫体など、身体の重要な構成要素です。エネルギーの源であり、栄養を蓄えたり運んだり、免疫を高めたり、生命を維持していくために、なくてはならない栄養素です。
肉、魚、卵、大豆製品に多く含まれます。
コレステロール
リン脂質と同様に細胞膜を形成する成分の1つです。身体に負担をかけるものと思われがちですが、細胞膜を作るためには必要不可欠な成分です。ホルモンの原料でもあり、エストロゲンやプロゲステロンもこれに含まれます。また、脳の情報をスムースに伝達する役目もあり、脳の神経線維を覆う膜状の成分でもあります。
不足すると、細胞膜の栄養の取り込みや代謝が機能しなくなり免疫力の低下にも繋がります。
ビタミン・ミネラル・食物繊維
体内でタンパク質や脂質、糖質などを調節したり、タンパク質の合成を促すために必要な栄養素です。体内で作る事が出来ないため、バランスよく補完される事が必要です。
鉄は、月経がある女性にとっては不足しやすい成分ですし、亜鉛は、女性ホルモンの分泌を促してくれます。
ビタミンB9の葉酸は、妊娠初期における胎児神経管閉鎖障害を予防し、胎児の成長には不可欠です。
食物繊維は、栄養の吸収これらの栄養素は日頃から不足しがちなので、妊娠前からしっかりと補完していきましょう。
身体に必要な栄養素を食事を主体にして、必要があればサプリメントなどで補完を行い、バランスを整えていきます。
バランスのとれた食事を摂る事はもちろんですが、リラックスできる時間作りや適度な運動、十分な睡眠、もとても大切です。
また、身体の冷えは、血液循環も悪くなり、ホルモンバランスやAMH値、子宮内膜の厚さ等、様々な影響を及ぼします。日頃から身体を冷やさない服装や、しっかりとお風呂で身体を温めるなどの生活習慣にも留意し、健康な体作りのためにご自身で出来る事を実践していきましょう。ただし、サプリメントの単体使用や栄養補完を独自の判断で行うとリスクを伴う場合があります。専門の医療機関に相談されたり、サプリメント会社のカスタマーサービスなどにお問い合わせされるとよいでしょう。
当クリニックでは、食事や栄養のサポートはもちろんですが、ご自身の不足している栄養素やホルモンバランス、代謝の程度や腸内環境等の傾向性を髪の毛で調べるPRA検査を実施しています。
https://www.natural-c.com/infomation_qrs/
また、細胞膜の主要成分で栄養の吸収や代謝を高めるレシチンや、卵が受精する際に必要な糖鎖などを用いながら、細胞レベルから身体を整える治療を実践しております。
詳しくは、お気軽にクリニックへお問い合わせ下さい。