認知症は、様々な要因により脳の働きが低下して社会生活に支障を
きたす「症状」で、正式な病名ではありません。
認知症を引き起こす原因として、脳の病変による一次的要因と脳以外の
身体的・精神的なストレスによる二次的要因があります。
一次的要因と二次的要因
一次的要因の主な病気として
・アルツハイマー病
・レビー小体型認知症
・血管性認知症
・前頭側頭型認知症
・脳腫瘍、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫
・交通外傷、脳挫傷
・クロイツフェルト・ヤコブ病
・ウェルニッケ脳症
等が挙げられます。
病気が引き起こす認知症の要因は様々で、完全にはわかっていませんが、
徐々にそのメカニズムが解明されつつあります。
アルツハイマー病患者の脳では、実は認知症の症状が現れる何十年も前か
らダメージが出始めるらしい、ということが最近明らかになってきました。
アルツハイマー型の認知症は、老人斑と神経原線維変化という2つの病変が
脳に現れることが判明しています。
老人斑は、アミロイドβと呼ばれる蛋白質が神経細胞の外に沈着したもので、
アルツハイマー型の認知症にのみ診られます。これが十数年経過する中で
神経細胞の内側に神経原線維変化が形成され、その結果、神経細胞や神経の
ネットワークが破壊され、認知症の症状が起こる、という説があります。
また、アルツハイマー病患者の脳では、健常者と比較するとリン脂質の量が
減少している、という研究がアメリカやカナダで発表され、注目される様に
なりました。細胞膜の形成に不可欠のリン脂質は、ヒトの体内でレシチン→
コリン→アセチルコリンと変化します。コリンは脳や神経組織の構成物質で、
脳機能維持に関与しており、アセチルコリンは、記憶と学習に関わる神経伝達
物質です。これらの原料であるリン脂質が不足する事で、記憶力の低下や脳の
老化が進行するのでは、とも考えられています。
また、高齢に伴い、栄養の吸収力も低下するため、脳に必要な栄養素が不足する
ことも考えられます。
二次的要因には、環境の変化や人間関係、不安や抑うつ状態、身体的症状等が
考えられます。病気になって入院したり、引っ越し、転居といった環境の変化で
認知症が現われたり、骨折や痛み、貧血など体の変調により認知症が進行してしまう
まうこともあります。定年退職や身内の死がきっかけになることも珍しくありません。
認知症の発症に繋がりやすい要因
誰しも認知症にならずに、健康寿命を延ばしていきたいものですよね。
年齢とともに脳の働きが低下するのは避けられないのかもしれませんが、それ
でも出来るだけの努力はしていきたいものです。
日頃から健康に気をつけることは、認知症を予防する上でとても大切ですが、特に
二次的要因については、事態が深刻化しない様、日常の中で注視しながら早めに対策を立て
ることが発症を抑える最善の予防策と言えます。