【香】第5秘訣 実践!スローライフ
現代社会の美徳的考え方に、「スピーディ」「迅速」という言葉があります。仕事も生活も速さが基本。テキパキとこなして正確、かつ処理能力の速さが競われています。
一方、最近ではスローライフという言葉がささやかれていますが、これは、せわしない生活から一歩離れて、ゆとりを持つ、心を育てる生活のことをいいます。
しかし何でもダラダラとゆっくり行うという、ルーズな意味ではありません。時間に追われる生活だけではなく、時間を味わう生活を取り入れることが、ストレスを解消、軽減するためのスローライフの考え方だと思います。一日の時間は人間みな平等に24時間であり、時は止まることなく刻まれています。「時間が足りない」「時間がもったいない」と過ごすのではなく、今の時間を大切にし、自分が満足する時間の過ごし方を一日の中に取り入れましょう。
例えば、仕事が毎日忙しい人。15分でも早く起きてコーヒーをゆっくり飲んで一人の時間を味わう…これもスローライフですし、休みの時には自分の好きなことに没頭して、マイペースでゆったりとした時間を過ごす…これもスローライフです。
私は、このスローライフを当時3歳になる娘から教わりました。仕事と家事と育児で、「時間が足りない~」と毎日忙しく生活していた私。とくに移動には、「時間をかけずスピーディに」が私のモットーであり、時間を効率よく使うことに命をかけていたような生活でした。
ある日、いつもは自転車でとばしていた外出コースを、徒歩で出かけることになりました。娘は興味津々で
「ママ、ここにお花が咲いているよ」
「わぁ~この石は大きいなぁ。いつからここにあるんだろう」
「この虫はなぁに? 何をしているのかなぁ」
「空が青いねぇ。きれいだねぇ」
「お日様の匂いがするね」
忙しさのせいにして、私が普段見過ごしていた風景は、それはそれは素晴らしいものであり、こんな風に自然を存分に味わいながら、ゆっくり歩くことを忘れていた自分に気づきました。大事なことは時間にせかされるのではなく、時間を十分に味わうことができる生活、心がホッと優しくなるひとときが人間には必要なのです。あっちへ行ったり、こっちへ行ったり、はたまた引き返したり…普段は10分足らずの道のりですが、娘と自然を発見しながらの道のりは3倍以上もかかりました。しかし、私の心はその何十倍も癒され、「こんな時間も必要なんだ」と娘に教わったひとときであり、今も鮮明に思い出されます。
本来、子供はスローライフの天才。生まれ持った人間の本能と感性で生活しています。
しかし、ストレスを抱える子供が多くなった世の中の背景には、大人たちの「早くしなさい」「急ぎなさい」という言葉、そしてテレビゲームやコンピュータゲームの普及により、スピードと点数を競い合う…といった遊びが中心になっていることが原因にあるように感じます。
日常生活を、自分に合った居心地の良い状態にするには、
「無理をせず、自分らしさを生活に取り入れ、限られた時間を大切に使う」ということだと思います。「10分しかない」という考え方から「10分もある」という考え方に変換する生活こそが、心身ともに癒されるスローライフなのでしょう。(著:鈴木奈津子)
ナチュラルクリニック代々木 ※クリニックニュース Vol.10 掲載記事